運動靴と赤い金魚

cover「運動靴と赤い金魚(1997年イラン/マジッド・マジディ監督)」
少年アリはお使いの途中、修理に出していた妹・ザーラの靴をうっかりなくしてしまう。家はとても貧しく新しい靴を買ってもらえそうにないので、両親に内緒でアリの靴を交替で履いて学校に行く。大人になってしまえば何でもないようなことが子供にとっては大きな悩みであり、それを何とかしようと兄妹が知恵をだして必死に生活していく姿がリアルでほほえましく、また涙を誘う。イラン映画は素人を起用することが多いそうで、この映画の出演者もほとんどが素人。でもその純朴な演技がとても素敵な輝きを放っていて見ていて清々しく感じた。とても貧しい家庭だが、その悲惨さを描いているわけではないところに好感がもてる。子供を通して様々なことが見えてくる奥深いドラマがある。

戦場のピアニスト

cover「戦場のピアニスト(2002年ポーランド・フランス/ロマン・ポランスキー監督」
徹底的に破壊されていくワルシャワの街、そんな絶望の中でひたすら生き延びることに希望を見いだすユダヤ系ポーランド人のシュピルマン。ナチスの虐殺が非常に生々しく、淡々と流れていくところに真実性が表れていると思う。
すごく重たく、切なく、衝撃的な作品。こんな時代だけに、改めて戦争について考えさせられます。劇場に年輩の方が多かったのが印象的だった。

シーズンチケット

cover「シーズンチケット(2000年イギリス/マーク・ハーマン監督)」
イングランド・プレミアリーグのシーズンチケットを手に入れるために2人の少年があの手この手で資金集めをする、というお話。ストーリーの背景には虐待や失業など深刻な社会問題をベースにしているため、全体的にシリアスタッチではあるが、仄かなユーモアやさわやかな感動があるハート・ウォーミングなストーリー。あのイングランドのスーパースター、アラン・シアラーも出ています。紅茶を飲みながらサッカー観戦がしたくなった。

Dolls

cover「Dolls(2002年/北野武監督、出演:管野美穂、西島秀俊」
北野武監督最新作。赤い紐でつながれた3つの愛の物語。芸術的な観点ではすごく好きなテイスト。夢幻的なストーリーはやや無理もあるけれど、衝撃的な結末、山本耀司の衣裳や日本の四季を幻想的に追求した映像の美しさはインパクトがある。北野武の世界観はシンプルながら筋が通っている。パンフレットの出来もこれまたよかった。

SHORT6

cover「SHORT6(2002年)」
短編映画6作品のコンピレーション。その中の「四つの部屋と六人の打楽器奏者のための音楽(2001年/スウェーデン/10分)」は抱腹絶倒の最高傑作。老夫婦の留守中に押し入る6人のスパイ風の怪しげな大人達。中に入ってやることは、部屋にある雑貨や家具で音楽を奏でること...。そのあまりにシュールでふざけたシチュエーションとマジメで完璧な演奏のギャップがとてつもなく不思議な異空間を作りだしている。こんなに腹がひきつるほど笑ったのは初めてかも。思わずリピートして観ちゃいました。機会があったら是非みてほしいです。

蝶の舌

cover「蝶の舌(1999年スペイン/ホセ・ルイス・クエルダ監督、出演:マニュエル・ロサーノ、フェルナンド・フェルナン・ゴメス)」
学校を怖がっていた8歳のモンチョは大好きな先生と出会い、様々な体験を通して成長していく。しかし、スペイン内戦という現実の前に、悲しい別れが訪れる…。クライマックスはかなーり複雑な後味なのだが、最後のセリフがめちゃくちゃジーンときて、いろいろ考えさせられる。果たして、モンチョの声は先生に届いたのだろうか。届いていて欲しいと強く思うばかり。衝撃的な作品だった。

アメリカン・ヒストリーX

cover「アメリカン・ヒストリーX(1998年アメリカ/トニー・ケイ監督、出演:エドワート・ノートン、エドワート・ファーロング」
人種差別をテーマにした超社会派映画。衝撃的なエンディングは、人種差別という根の深い問題がいかに救われないものかを表していてツラかった。タイトルの解釈はいろいろあるだろうけど、「x」という未知数を人種差別問題と捉えるならば、それを今後どう解いていくかの問題提示をしている。道徳映画としても、娯楽映画としても意義の深い映画。エドワート・ノートンが素晴らしかった。

アンジェラの灰

cover「アンジェラの灰(1999年アメリカ=アイルランド/アラン・パーカー監督)」
原作者であるフランク・マコートのアイルランドでの貧しい少年時代を描いた作品。大恐慌の1930年代の悲惨な時代、ニューヨークから祖国のアイルランドに戻った貧困の一家において父は酒に溺れ、母は啜り泣き、6人の兄妹のうち3人が死んでしまう。しかしそんな絶望的な状況の中でも、フランクは決して希望を捨てず、健気に、ひたむきに生きていく姿が感動を呼ぶ。至る所に織り込まれたユーモアがさわやかで、見た後は爽快にさえなる。フランクを演じる3人の子役の演技がまた、素晴らしかった。