Music Review : 2005年5月

TRIVIUM / ASCENDANCY 【85点】

フロリダ産メタル・ハードコアバンドの2ndアルバム。VoとG兼任のフロントマン・マット・ヒーフィーは日系人。崇拝するプレイヤーはIN FLAMESのイエスパー・ストロムブラード&ビヨーン・イエロッテ、そしてARCH ENEMYのマイケル・アモットというだけあって、間違いなく北欧メロディック・デスが根底に流れていて、メロディックなツインリードやキレのあるリフが非常に心地よい。ヴォーカルもスクリームとクリーンを巧みに使いこなす現代的なスタイル。KILLSWITCH ENGAGEが好きなら間違いなく買い。まだ19歳のマット。今後ももしかしたらものすごい作品を産み落としそうなポテンシャルを感じさせる。

MORS PRINCIPIUM EST / THE UNBORN 【88点】

かつて大量のバンドを産み落としていたメロディックデス市場も最近は大御所バンドが次々と路線変更していき影を潜めつつあるが、中堅クラスではメロディックデスメタルかくあるべし!を高いクオリティで実践しているバンドも少なからずいる。そのうちのひとつがこのモルス・プリンシピウム・エストだ。デビューアルバムの衝撃度は勝負作である2ndでも確実に受け継がれており、#1〜#3あたりの超ハイテンションな王道メロデスサウンドは聴く者全てにKOパンチを喰らわせるインパクト。プロダクションの弱さはほとんど改善されておらずギターのブ厚さに若干の不満はあるものの、これも北欧メロデスバンドの味と思えば全く気にならない。どこにも迎合していないピュアなメロディックデスを聴きたいならオススメです。(H)

HAREM SCAREM / OVERLOAD 【81点】

ちょっと時流に乗ってみちゃいました的なアプローチは、このバンドにはもう当たり前のようになってしまっているので特に驚きはしないけれど、本作でのモダンロックというかエモ寄りの路線はそのテンションに乗り切るには今一歩という印象。前々作、前作とどんどん自分が期待するHAREM SCAREM像に近づいてきていたので、あ、またちょっと遠くにいっちゃったなっていう感覚に支配されたまま聴き終えてしまった。路線そのものもそうなのだが、もうちょっとツメてくれればもっと良かっただろうなと思うような感じ。HAREM SCAREMらしくないとは決して思わないが、彼らならもっとすごいモダンロックを作れるんじゃ?(H)

WAKING ASHLAND / COMPOSURE 【80点】

TO/DIE/FOR / IV 【90点】

フィンランド産ゴシックメタルバンドとして確実にキャリアを積んできたTO/DIE/FORだが、本作では大幅なメンバーチェンジを敢行。しかし、看板であるJapeさえいればこのバンドが成り立つという構図がはっきり出ており、メンバーチェンジの影響はさほど感じられない。Japeの妖艶な声を引き立てる各パートの仕事ぶりは十分だし、過去のアルバムに比べて楽曲のクオリティがまんべんなく全体に浸透していて、個人的には過去最高の満足度。#1「Autumn Forever」、#2「This World Is Made For Me(ギターソロが絶品)」#6「Little Deaths」、#8「Fragmented」、#9「Endlessly」などなど、琴線に触れまくるメランコリックなメロディはまさにこのバンドにしかできない魅力である。(H)

WITHIN TEMPTATION / THE SILENT FORCE 【87点】

美声女性シンガー、シャロン嬢率いるシンフォニック・ゴシックメタルバンド、WITHIN TEMPTATIONの3rdアルバム。一言で(誤解を恐れずに)いえば、NIGHTWISH+EVANESCENCEといった趣。壮大なスケールのサウンドに透明感のあるシャロン嬢の美しい調べが天空を舞うように広がっていく。演奏陣はハードな曲ではヘヴィに、ソフトな曲では優しいタッチでと、緩急自在に曲のイメージを具体的に創造していく。ドラマティックな曲を5分程度の曲にコンパクトにまとめる手腕も見事。全てにおいて完成された素晴らしいアルバムだ。先行シングルにもなった「Stand My Ground」が特にオススメ。(H)

SCAR SYMMETRY / SYMMETRIC IN DESIGN 【88点】

SOILWORK系エクストリーム・メロディック・デスメタルバンドのデビュー作。クリスチャン・アルヴェスタム(Vo)ほかラインナップはこれまでに数々のバンドで実績と経験を積んだ強者揃いらしい。デスとノーマルを使い分ける所謂新世代のフューチャリスティック&エクストリームなメタルだが、とことんキャッチーなデスメタルであり、メロディアスなギターソロやシンセを隅々まで染み込ませた緻密な音づくりが魅力。それにしてもクリスチャン・アルヴェスタムのヴォーカルの多彩さは圧倒的。地響きのようなグロウルから迫力満点のスクリームを発していると思いきや、クリーンパートでは同一人物とは思えないくらいマイルドな声を聴かせてくれる。#1「Chaosweaver」は悶絶必至の名曲。全体的には似通った曲が多いのでダレてしまうのが惜しいところだが、SOILWORK以上の支持を集めるポテンシャルを感じさせるぐらい今後が楽しみなバンドだ。(H)